今住んでいる北京の家の家賃は、正直言ってかなり高い。建っている場所が「国貿」という北京市内の商業地区のど真ん中にあり、地下鉄の駅も近く、近所にスーパーやデパートもあって立地条件的にはまず申し分なし。しかも外国人駐在者向けに作られたホテル形式のマンションだから、諸々のサービスも非常にしっかりしている。基本的な物価が安い中国の水準からはもちろんのこと、私のような平均的な日本人サラリーマンの懐事情からしても、とてもじゃないが自腹で住めるところではない。では何故今こうして住んでいられるかというと、私を雇用する日本の会社が家賃を全額負担してくれているからである。ありがたやありがたや。東京方面には足を向けて寝られない私だ。ええと、北京から見て東京はどっちだったか。
その家賃の支払いだが、これがちょっと面倒くさい。まずは日本の会社から私が中国に開設した中国銀行の口座に日本円で振り込まれる。それを私が自分で銀行の窓口に行って日本円から中国元に換金して引き出す。その現金を懐に抱えて帰宅し、マンションのフロントで支払ってようやく支払い完了という案配である。今時こんなアナクロな方法じゃなくて、直接日本からマンションの管理会社にドル建てで振り込むなり、あるいはネットバンキングを使ってオンラインで支払うなりできそうなものだが、外貨の入出金が厳しく監視されている中国ゆえ(中国だけじゃないかもしれないが)、それは不可能なのだった。結局はオフラインかつ現ナマでやるしかないのである。
ということで本日、今月分の家賃を引き出すべく、会社の近くの中国銀行に行ったのだった。どうでもいいが中国の銀行の窓口は非常に混んでいる。聞くところによると、単なる現金の引きだしや振り込みをするだけなのに、わざわざ窓口に並ぶ人が多いかららしい。もちろん窓口の横には引き出しも振り込みも出来る ATM が常備されていて、それを使えばすぐに終わるわけである。なのに皆、とりあえず窓口に並ぶ。だから混む。異常に混む。だいたいどの時間に行っても二十分から三十分待ちはザラである。あのな、現金引き出すだけだったら ATM を仕えよ、おばちゃん。振り込みもあっちの機械で簡単に出来るのよ、おとうさん。仏頂面で現金数えている暇があったら ATM の使い方をここに並んでいる連中に教えてやれよ、銀行員のあんちゃん。
さんざん待たされてようやく私の番が来た。人混みをかき分けつつ窓口で通帳を叩きつける。ほれとっとと私の口座の日本円を中国元に変換して引き出してくれたまえ。いくら替えるかって?そりゃあもちろん全額どーん。日本円から人民元に全部ばーん。太っ腹でしょ。いやまあ俺の金じゃないわけですが。え、できない?なんで?振り込みされた外貨を換金するにはパスポートが必要?って、おい。先月までそんなもん必要なかったじゃん。通帳さえ持ってきたらちゃんとやってくれてたじゃん。しかもパスポートがあってもここの支店じゃ換金できない?ここからずっと離れた別の支店へ行け?あのー、ここの窓口で何度も引き出してるんですけど。つい先月までちゃんとできてたんですけど。そんなのは知らん?規則だからできない?はい次の人て、ちょっと待てコラ。わかるようにきっちり説明せんかい。うわ無視かよ完全シカトかよ。日本人だと思ってなめとんのか貴様。よーしわかったこうなりゃ暴れちゃうぞ。窓でも机でもバンバンぶっ叩いて大声わめき散らしちゃうぞ。って、気がついたら警備員がぴったり横に立ってるんですけど。鋭い目つきでこっちを睨んでるんですけど。よく見ると手にはショットガン握ってるんですけど。
お父さんお母さん、お元気ですか。私は北京で少しばかり疲れています。
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