先週末、同僚(中国人)のお父さんが亡くなり、今日は告別式に参加してきた。今年の夏に同僚の結婚式(というか結婚パーティー)に出たことはあるが、中国のお葬式に出るのは初めてだ。
告別式は北京市内にある葬儀場で行われた。北京には葬儀場がいくつかあるそうだが、ここはその中でも最大のもの。なんでも中国共産党の幹部や北京市の偉い人が亡くなると、ここで葬式を行うという由緒正しきところらしい。この葬儀場には広大な敷地内にいくつもの斎場が並んでいるのだけど、今回の葬儀はその中の一番立派な施設で行われる。なんでも亡くなった同僚のお父さんという方が、かつて北京市のお役人、それも局長クラスの人物だったそうで、ここで葬儀が執り行われるのは当然のことらしい。こういうところにもしっかりと序列が発生するあたりが、なんとも中国らしい。妙な感心をするのは不謹慎ですが。
先週末から記録的な寒波に襲われ、外に立っているだけで凍えそうな寒さのなか、葬儀は始まった。講堂のような大きな部屋の奥に、花に囲まれ棺に納められたご遺体が眠っている。日本では普通、棺の小窓から顔だけしか見ることが出来ないが、棺の上蓋は完全に開け放たれており、ご遺体の全身が見られるようになっている。ただし体にはもちろん中国国旗が被せられているが。部屋の壁に沿って関東地方の葬儀に使われるような造花の花輪が、コの字に並んでいる。花輪には花を贈った企業や団体、個人名が一つ一つつけられている。
また、中国の葬式というと、もっときらびやかで豪華な感じを想像していたが、かなりシンプルな飾り付けだ。また中国は基本的に無宗教国家なので、日本の一般的な仏教系葬儀のような読経や焼香などはもちろんなし。厳かな葬送の音楽が静かに流れる中、二三人ごとに並んだ参列者がご遺体に向かって三度おじぎをしたあと、ご遺体のまわりをぐるっと回り、後方に控えている家族に挨拶して終わり、というこれまたシンプルなもの。ちなみに香典という慣習もない。
ひとつだけちょっと驚いたのが、ご家族の女性達が式の最初から最後まで号泣していることだ。後で聞いたところによると、この場は泣かなければならないところで、泣かないのは死者に対して薄情者ということになる。泣くのは女性の役目で、男性はただ黙っている。それにしたって、この号泣の仕方が半端ではない。全く聞き取れない大声を上げ、体をよじるように全身で泣いている。居ても立ってもいられないとは、正しくこういうことを言うのだろう。地面を足で踏み鳴らすように泣きじゃくる。母親(故人の奥さん)とおぼしき人と妹(同じく娘)、さらには親戚縁者らしき女性が皆、まるで精神状態がおかしくなったように泣き叫ぶ。周りはこれを鎮めようと抱きかかえるように支えている。
楽しいときには腹を抱えて笑い、むかつくときには頭から湯気を立てて怒る。そして哀しいときにはただひたすら泣く。自分の感情に素直に従って生きる中国の人たち。葬儀もやはり感情が爆発するのだった。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。