ということで南の島、バリ島にやって来た。しかし南の楽園のはずだったこの島は、無差別テロという狂気により再び地獄絵図に変わっていた。
19:30
シンガポール経由でバリ島、デンパサール空港に到着。飛行機内は欧米系や日本からの観光客でそこそこ混んでいたが、空港自体はそれほどでもなく、いたって平和。北京から乗り換えを含めて何だかんだで十時間。ようやく着いてホッとした。それがまさかこんなことに巻き込まれる羽目になるとは、このころは夢にも思っていなかった。
20:00
空港からすぐ近くのホテルにチェックイン。とりあえず荷物を解き、海岸付近まで散歩がてら歩いてみた。漆黒の空にはいつも見慣れた蠍座が上下反対にかかっている。南半球にやって来たことを実感。部屋に戻ってビールを飲む。
22:00
適度なアルコールと長旅の疲れからベットに転がってウトウトしていたら、テレビを見ていたかみさんの「バリで爆発騒ぎがあったって!」という声に飛び起きる。
慌ててテレビを見ると、今夜 8 時頃、バリ島の市街地で爆発騒ぎがあり、多数の死傷者が出ているとのこと。泊まっているホテルからほど近いクタの街中や海岸沿いのレストランなどの三カ所でほぼ同時に爆発が起きたらしい。本当か。
22:10
とにかく情報収集することが先決だ。テレビのチャネルをあちこち変えて、一番情報の早いと思われる CNN を見続ける。爆発で滅茶苦茶になった建物や血だらけになって救急車で病院に搬送される人たちの映像が映し出され、息を飲む。CNN によると、現時点で死者は九人、負傷者は多数出ているらしい。黒地に赤の「Bomb Terror」の見出し。やはり事故ではない。テロだ。
22:15
テレビだけでは埒があかないので、ネットの接続を試みる。ホテルの部屋は残念ながら有線・無線 LAN はない。仕方なく電話戦を引き抜き、アナログ回線でのダイヤルアップを試す。GRIC のネット接続ソフトからこの付近のダイヤルアップサーバの電話番号を調べて接続を試みるが、しかしモデムがネゴしている音は聞こえるものの、そこから先に全く進まない。回線が混雑しているためだろうか。ネットの接続をあきらめ、日本の実家に国際電話をかけてみる。しかしこちらも全然繋がらない。
23:30
CNN と NHK-BS をザッピング。犠牲者、負傷者の数がどんどん増える。死者は 19 人、負傷者は依然不明。テロップで流れる死者・負傷者リストの中に、日本人らしきアルファベットが見える。一歩間違えば、我々もあの中に入っていたかもしれないと思うと、ぞっとする。地元のテレビ番組ではコメントも何も無しで延々とテロ現場や負傷者が搬送された病院の様子を映している。病院の床にあちこちに散らばる真っ黒な血だまりが生々しい。
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