スウェディッシュ・ラリーの最終日 Leg3(三日目)。Leg 1 から繰り広げられてきた緊迫の首位争いは、結局あっさりと決着がついてしまった。SS16 のステージ半ばで二位のマーカス・グロンホルム(プジョー)がコースオフで大クラッシュ。左フロントタイヤがもげてしまいあえなくリタイアとなり、また三位につけていながら前日終盤にエンジンにダメージを負っていたシトロエンのセバスチャン・ローブも土壇場の SS19 でついにエンジンを壊してストップ。全開につぐ全開の火の玉バトルは、ライバルの自滅というかたちでペター・ソルベルグ(スバル)の勝利で終わった。スウェディッシュ初勝利のソルベルグは大変目出度いが、最後の最後まで三つ巴の激戦を期待していたのでちょっと残念。ま、これがラリーだ。
以下、二位にはマルコ・マルティン(プジョー)、三位トニ・ガルデマイスター(フォード)。ガルデマイスターは前戦のモンテカルロに続いての表彰台フィニッシュで、ドライバーズポイントも暫定首位に躍り出た。元々速さは折り紙付きだったもののマシンに恵まれずに成績的には今一つパッとしなかったが、初めて「勝てる」マシンを与えられてその才能がようやく開花したということか。ヴィジュアル的にも F1 パイロットのキミ・ライコネンにちょっと似た「北欧の貴公子」っぽい感じなので、これから人気が出てくるかも。
注目の三菱勢はエースのハリ・ロバンペラが四位、「ガリガリ君」ことジャンルイジ・ガリが総合七位に入る大健闘。復帰第一線のモンテでジル・パニッツィが三位フィニッシュしたのに続いて、今回も堂々の二台入賞は本当に立派だ。一年前の惨状を思い返しつつ、ファンとして感激の涙で褒め称えてあげたい。いやしかし多少は期待していたものの、まさかここまでやるとはなあ。特に一時は総合四位につけていたガリの健闘は素晴らしい。それだけに Leg2 でのマシントラブルが悔やまれる。勝負事に「たられば」は禁句だが、あれさえなければ表彰台も夢ではなかっただけに、返す返すも惜しい。しかしそんなトラブルにもめげることなく、最後まで上位陣を脅かした激走は見事の一言に尽きる。コンスタントに速いだけではなく、並み居る強豪を抑えて SS 最速タイムも叩き出すここ一発の速さも持ち合わせているだけに、マシンの熟成と合わせて今後が大変楽しみな存在である。頑張れガリガリ君。日本の三菱ファンはみんなゲン担ぎのアイスを喰いながら君のことを応援してるぞ。
今回のラリーでは、ガルデマイスターやガリ、ダニエル・カールソン(プジョー)など、次代を担う多くの若いドライバー達が活躍したわけだが、中でもスバルの新人でオーストラリア人初の WRC ドライバーの座を射止めたクリス・アトキンソンに私は注目したい。残念ながら SS19 でコースオフし大幅タイムロスを喫してしまったが、今回が WRC 実戦デビュー、しかも初のアイス&スノーのラリーでありながら、時折見せる強烈な速さに大器の片鱗を垣間見る思いである。ラリー後のコメントもいい。
「もし、ゆっくり走っていたら、コースオフすることも学ぶこともなく、残念な結果になっていたと思う。だから、怯えながら走るよりも、限界を知るためにミスをすることを選んだ。もちろん、総合順位としてはもっと上へ行くこともできたかもしれないが、僕たちがここに来た目的は学ぶことであり、そしてそれを確実に達成した」
WRC の世界で活躍した伝説のドライバー達も、誰もが最初は新人だった。みんな何度もコースオフし、マシンを壊し、そして成長していったのだ。きっと君はもっと速くなる。そして近い将来、表彰台の一番高いところを狙えるまでになるはずだ。頑張ってくれ。おじさん、応援するよ。
なかなか楽しい週末だった。次はちょうど一ヶ月後、ラリー・メキシコ。
参考URL:
三菱 WRC
SUBARU MOTOR SPORTS
World Rally Championship Official
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