昨夜「BS マンガ夜話」にて、青池保子の「エロイカより愛をこめて」が特集されていたので見た。これは「THE・少女マンガ!~作者が語る名作の秘密~第2弾」という三夜連続もの企画の最終話だそうで、第一話は美内すずえの「ガラスの仮面」、第二夜は庄司陽子の「生徒諸君!」だったらしい。ちなみに第一弾の時は「ベルサイユのばら」(池田理代子)、「デザイナー」(一条ゆかり)、「ポーの一族」(萩尾望都)という組み合わせだとのこと。なんというか王道と言いますか、濃いいと言いますか。
昨夜の「エロイカ」特集だが、内容的には「エロイカ」のストーリーとその時々の世界情勢をオーバーラップさせたり、青池保子の生い立ちを実録ビデオにしたりと、NHK らしくそこそこそつなくまとめたという感じ。なかでも若干 15 歳でデビューしてから独自のスタイルを確立していくまでの道のりはなかなか興味深く、あの独特の画風とハチャメチャな風合いが一気に花開いたのが秋田書店との出会いだったというのは面白い。
ただ物足りなかったのが、青池保子ワールドを語る上で外せない要素である「60~70 年代ロックからの引用」への言及がまったくなかったこと。青池保子のマンガにしばしば登場する「王子様系のフリル付き衣装を身にまとい、巻き毛のキラキラ長髪をなびかせた貴公子」は、この時代に日本でも絶大な人気を誇った ELP や KISS、ANGEL、SWEET、そして QUEEN のイメージであり、また多くの作品で見られる独特の「明るいホモセクシュアル」なちょっとアブノーマルな世界なぞは、正にそのものズバリ QUEEN のフレディ・マーキュリーあたりからの影響が色濃くでているわけである。これらを語らずして青池保子の作品世界を紹介するとは、なんとも片手落ちと言わざるを得ない。
そして特に「エロイカ」の主要キャラのモデルとして忘れてならないのが LED ZEPPELIN というバンドの存在である。ロバート・プラントの伯爵、ジョン・ボーナムのボーナム君、そしてジミー・ペイジそのままのジェイムズ君。もし ZEP がいなかったら恐らく「エロイカ」は全く違うマンガになっていたはずだ。そんな作品世界に重要な位置を占める ZEP なのだから、せめて何か一言でもあって良かったのではないか。
しかし聞くところによると、ZEP の写真やビデオなどの版権は非常に厳しく規制されているそうで、一般のメディアに写真やビデオが登場することはほとんどないらしく、あっても莫大な使用料を支払う必要があるとか。さしもの NHK もこのあたりが引っかかって ZEP の紹介には二の足を踏んだのかもしれない。ちなみに ZEP の版権のほとんどを所有してコントロールしているのはジミー・ペイジだとか。「エロイカ」のジェイムズ君は吝嗇家の計理士だが、リアルワールドのジェイムズ君はさらに輪をかけてケチで小銭好きなんですな。
途中連載休止を挟んだものの、「エロイカ」の連載は三十年を越えるそうである。現在も某少女漫画誌で連載再開中で、来月には新しい単行本が発売されるとのこと。少女(あるいはかつての少女)のみならず、いい年こいたおっさんが読んでも十分ハマれる少女漫画も今や非常に珍しい存在だ。是非ともまだまだ連載を続けてもらって、我々オヤジも楽しませてもらいたいものである。
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