気がつくともう十一月である、季節的には秋本番から晩秋といったところだろうか。そういえばいつの間にか夏の名残である、もやーっと粘度の高い湿った空気感はかげをひそめ、気温の低下とともに空気の密度が高まってきた気がする。これであと一月もすればさらに空気の密度は増し、叩けばキンと音がしそうなほどになるだろう。そのときはいよいよ本格的な冬というわけである。
しかし関東地方に暮らしていると、この時期はなんとも中途半端な季節であるように思うのだ。十一月となれば名目的には晩秋ではあるが、その実、まだまだピンとこない気がする。なにせまだ十分に暖かい。そこそこに冷え込む朝晩はともかくとして、日中は結構暖かい日が多く、さすがに T シャツいっちょだと厳しいが薄手の長袖シャツでも羽織れば十分に過ごしていける。しかもついこの間までの暑い夏の記憶が鮮明に脳裏に残っていたりもして、そろそろ寒い季節であるという事実を何故か受け入れがたい妙な感覚がする。こうした体感的あるいは短期記憶的季節感と、カレンダーの残りページの少なさから突如として実感する、いつの間にやら年末が近かったのねというカレンダー的季節感とのギャップが甚だ大きく、なんともどっちつかずの微妙な中途半端さを醸し出す不思議な季節であるように思う。
で、そんな季節の話はどうでもよく、最近、私を惹きつけてやまないのが、NINTENDO DS のCMに出ている宇多田ヒカルだ。いや正確にいうと宇多田ヒカル本人ではない。俺の目をとらえて話さないのは、あの真っ赤で、中途半端な長さのワンピースの、なぜか胸付近にぽっかりと大口を開けた、あの丸穴だ。お前はハニーフラッシュ後のキューティーハニーか。いやキューティーハニーはいいのだ。あのコスチュームはユニフォームであるとともに記号でもあり、穴から見える胸の谷間は彼女の重要なアイデンティティなのだ。しかし宇多田ヒカルは違う。断じて違う。真っ赤な衣装もいいだろう。微妙な長さのワンピースでも構わない。だが宇多田ヒカルには、断固として胸に穴は要らない。いらないったらいらない。いらないんだよチキショーッ。
と、この CM を見るたびに見るたびに見るたびにそう思うのに、ボーとしているときにあのCMを見るとついあの穴に目が行ってしまうのである。「おおっ!」と身を乗り出した直後、「そうだ、こいつだったか」と気がついて、ちょっとがっくりした気分を味わう私。勝ち負けで言えば負け。しかも惨敗。何に負けたのかは自分でもよくわからんのだが。
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