世界ラリー選手権(WRC)の第14戦ツール・ド・コルス(SS12:387.80km/リエゾン672.92km)が、10/15~17、フランス・コルシカ島で行われた。前戦のサルディニアやスペインなど、グラベル(未舗装路)への変更が多い中、貴重になってきた本格ターマック(舗装路)ラリー。コルシカ島の山岳地帯を縫うように走るコース設定で、例年変わりやすい天候にドライバーもチームも悩むことになる。昨年はターマックスペシャリストのセバスチャン・ローブ(シトロエン)がまさかのリタイヤで脱落、レッキ(練習走行)中にマシンを大破させたペター・ソルベルグ(スバル)が奇跡の優勝を遂げるなど、波乱の結果となることが多いラリーなのだが、今年はどうか。
結果は予想外というかなんというか、、マルコ・マルティン(フォード)が優勝。てっきりローブとソルベルグの一騎打ちになるかと思ったが、意外な伏兵が勝利をかっさらっていった。確かにマルティンはこれまでそれなりに速かったけれど、よもやターマック・ラリーで勝つとは。二位にはローブ。イベント当初からこのラリーに勝つことよりも年間タイトルを取ることに専念し無理はしない、と公言していたように、ポイント重視の慎重な走りをキープ。それでも二位に入ってくるところがこの男の凄いところか。これでローブは今回のポイント獲得で、シリーズチャンピオンとなることが決定である。いつもクールなローブもさすがにチャンピオン決定は相当嬉しかったらしく、得意の後方宙返りをかますほどのはしゃぎっぷり。ちなみにこの人、ラリー・ドライバーになる前は、フランスのナショナルチームに入るか入らないかというぐらいの一流体操選手だったという異色の経歴の持ち主だったり。バック転なんてお手のものですか。
それにしてもここ三戦、わずかな望みにかけて猛追していたソルベルグだが、残念ながら反撃はここまで。第 3 レグの SS9 でステージウィナーになるなど打倒ローブに向けて必死の走りを見せたものの、今イベントではタイヤが合わず初日から大きく出遅れたのが痛かった。今年はこれまでローブと同じく五つのイベントで勝ってはいるのに、やはりリタイヤでノーポイントに終わったラリーが多すぎたことが最後に響いた。なにせローブは今年、ノーポイントだったのは第三戦のメキシコのみで、その他は全て四位以上でフィニッシュするという抜群の安定度。ここ一発の絶対的な速さで言えばローブよりもソルベルグの方がわずかに上なのかもしれないけれど、たとえ勝てなくてもポイントだけはきっちり取っておく冷静な走りが今年の命運を分けることになったわけである。やっぱりモータースポーツ、特にラリーは完走してナンボなんですなあ。
ついでにこのラリーの結果、シトロエンはローブのドライバーズタイトルだけでなくマニファクチャラーズタイトルも奪取し、二年連続でのシリーズ制覇を決めた。ローブとサインツ先生という現在の WRC ドライバーの中でも最高レベルの安定感を誇るドライバーを擁するだけに、タイトル連覇は当然といえば当然の結果だが、できれば他のワークス勢ももうちょっと頑張ってほしいところ。特にプジョーの低迷はどうしたことか。ほんの二年前には我が世の春を謳歌していたのに、短期間でよもやここまで勝てなくなるとは思いもよらなかった。トラブル続きの 307WRC の戦闘力、熟成度は徐々にではあるが上がっているようなので、来シーズンは捲土重来を期して頑張ってほしい。
ということで、今年も残るはスペインとオーストラリアの二戦を残すのみとなった。次は来週末のスペイン、カタルニア・ラリー。今年最後のターマックイベントで、はたして勝つのは誰か。個人的には、できれば地元のサインツ先生にワークス・フル参戦の有終の美(なのだろうか)を飾っていただきたいと思うのだけど。
参考URL:
三菱 WRC
SUBARU MOTOR SPORTS
World Rally Championship Official
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