WRC ドライバーのカルロス・サインツ(シトロエン)が、ついに引退を表明した。今年 42 歳になる WRC 界の「鉄人」は、ここ数年来オフシーズンになるとその去就が取りざたされていていた。昨年末には一度引退宣言し、のちにそれを撤回するということもあったが、どうやら今度は本気のようだ。
サインツは 1990 年、1992 年と二度のワールドチャンピオンに輝き、トヨタ、ランチア、スバル、フォード、そしてシトロエンと名門ワークスを渡り歩いたスペイン人ドライバー。今年もアルゼンチンで優勝して通算 26 勝という前人未踏の単独最多勝利記録を樹立。その他のラリーでも何度も表彰台に上がるなど、まだまだ十分現役で戦える実力はある。しかし家族と過ごす時間を優先させる為に引退を決意したとのこと。
サインツは地元スペインでは「エル・マタドール(闘牛士)」と呼ばれ、サッカー選手を凌ぐほどの国民的英雄だそうである。それはラリードライバーとして偉大な実績があるのはもちろんだが、紳士然とした立ち振る舞いと柔和な人柄に惹かれ、多くの人達に愛されているからである。そしてもちろんスペインだけでなく世界中の WRC ファンから愛され、また、ここ日本でも「サインツ先生」(ラリードライバーになる前は大学で弁護士を目指していたから付いたらしい)の呼び名で絶大な人気を誇った。
そういえば私が WRC に興味を持ったちょうどその頃、「若手の有望株」として華々しくデビューしたのがサインツ先生だった。トヨタ・セリカを豪快にドリフトさせて、ランチアに乗るユハ・カンクネンとの火花散る全開バトルに興奮したことも今や懐かしい。そのカンクネンやトミ・マキネン、ディディエ・オリオール、ケネス・エリクソン、フランソワ・デルクール、コリン・マクレー、リチャード・バーンズなど、1990 年代を駆け抜けた名ドライバー達が次々と WRC の世界から姿を消していく中、唯一現役で頑張り続けた人だけに、引退とは実に寂しい限りである。
ということで、WRC でサインツ先生の勇姿が見られるのも、先生の地元スペインでのカタルニアと今季最終戦オーストラリアの、あとわずか二戦になってしまった。非常に残念だが、これも決めたことなら仕方なし。どうせならカタルニアはもちろんのこと、最後のオーストラリアも優勝してもらって、不滅の WRC 28 勝を手土産に引退の花道を歩いていってほしい。
■ Carlos Sainz decides to retire(Rally-live.com)
■ Carlos Sainz official web-site
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