「Temple of Shadows」 ANGRA
プラジルが世界に誇るメロディック・スピード・メタルの至宝 ANGRA の大メンバーチェンジ後 2 作目となる 5th アルバム。 バンド再生に賭けるパッションが全編に満ち満ちていた前作「Rebirth」を越えることはないと勝手に思っていたが、良い意味で完全に裏切られた。
本作は、一人の十字軍騎士の生き様を通じて 11 世紀の宗教文化を描く(翻って現在世界の矛盾も映し出す、ということらしい)という、いわゆるところのコンセプト・アルバムとなっているが、そのテーマが持つ宗教的な美しさそして重厚さを見事に反映した密度の濃い楽曲群が並ぶ。前任者でありかつバンドの中心人物だったアンドレ・マトスの呪縛からようやく解き放たれたエドゥ・ファラスキ(Vo)の伸び伸びとしたパワーボイス、そして時に華麗に時に激情に身を任せつつ数珠のメロディを鬼のように弾きまくるキコ・ルーレイロとラファエロ・ベッテンコードのギターチームが生み出す、正にこれこそヘヴィ・メタルのカタルシスというべき目くるめく劇的メロディの洪水に一発で溺れてしまった。特にアルバム冒頭、クラシカルなイントロ小曲 "Deus Le Volt!" から怒濤のスピード・ナンバー "Spread Your Fire" に至る流れには完璧にノック・アウト。 私、久々に悶絶ですがな。
それ以降もジャーマン・スタイルのメロディックな疾走曲を適度に配置しつつ、ミドルテンポの硬質なヘヴィネスナンバー、メランコリックなパワーバラッド、ボサノバとジャズを融合させたような小粋なインスト、ブラジルの土着音楽を取り入れたスピリチュアルな大曲など、なかなかバラエティにも富んでいる。メタル一色に陥らないところが彼らの音楽的引き出しの多さだろうか。
それにしてもこんなアルバムを手にすると、私はこういう音楽を聴くために生まれてきたのだと再認識するわけである。ANGRA ありがとう。地球の裏側に向けて手を合わせたい気分だ。
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