北京出張三日目。薄曇り。いくぶん気温が低くて過ごしやすい。
今年の正月明けに北京に出張に来たときには、何も考えずに出された食事をひたすら平らげるという、飽食につぐ飽食に明け暮れた結果、帰国時には自分史上最高の体重値を叩き出すほどに肥えてしまった。その反省を踏まえ、今回の出張ではできるだけ摂取カロリーを減らすことにつとめようと決意してやって来たのである。
しかしここは食の国、中国は北京。何を食っても美味い。なんの変哲もない、そこらの店の飯だって美味。会社のお昼に食べる仕出しの弁当ですら美味しいぐらいである。いきおい全部食う。完食してしまう。これでは同じことの繰り返し。また太る。肥える。それだけは避けたい。なんとしても回避したい。
ということで、少しでも取り込んだカロリーを消費するためジョギングをすることにした。市内の地図を頼りに、ホテルから天安門を経由して紫禁城をぐるっと一回りし、「北京の銀座」と呼ばれる一大商業地区の王府井(ワンフージー)を通って帰ってくるというコースを設定してみた。これであれば距離にしてだいたい 12km ぐらい。いつものペースで走ったとして、所要時間は一時間強といったところか。
今朝は朝五時に起床。身支度を整えて軽く準備運動をしたあとでさっそく出発。まずはホテルを出て天安門広場へ向かう。さすがにまだ朝早いからか人通りも車の往来も少ない。昼間の、車と人と自転車がごちゃ混ぜになった正にカオス状態と言ってもいいような喧噪が嘘のように静かな大通りを走る。約 15 分ほどで天安門広場に到着。朝早いからきっとほとんど誰もいないだろうと思っていたが、すでに観光客が結構いる。中国の地方から出てきた人たちだろうか。
そういえば今日 6 月 4 日は、あの天安門事件が起きた日である。十五年前のあの日まさにこの場所で、狂気に満ちた血の惨劇が繰り広げられた。あの時、新入社員の研修で大阪にいた私は、宿泊していたホテルの部屋で、テレビに映し出された信じられない光景を固唾をのんで見守っていた記憶がある。あれから十五年。戦車部隊が無抵抗の学生、市民に鉛の弾の雨を降らせた同じところで、天安門をバックに記念写真を撮る観光客のわきをすり抜け、日本人の私が暢気にジョギングにいそしむのである。平和って素晴らしい。
天安門広場の広大な敷地を縦断して、故宮の西側横道を北上。北海公園につきあたったら大通りを右折し、今度は市内を東方面に進む。しばらく走って王府井まできたら、そのままメインストリートの王府井大街を南下して、ようようホテルに帰還である。所要時間は予想通り一時間とちょっとであった。いや、いい汗をかいたもんである。北京の中心街を一回りするこのコースは、歩道も広くてなかなか走りやすい。
これで少しは昨晩摂取したカロリー分を消費することができただろうか。
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