イノセンスを幕張のシネプレックス 10 幕張にて鑑賞。映画「MATRIX」を作ったウォシャウスキー兄弟をはじめとして世界中のクリエイターに大きな影響を与えた前作「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の続編。近未来サイバーパンク SF アクションアニメ。
なにせ音響と映像は素晴らしいの一言。特に音関係はすごい。ルーカススタジオで銃声からバセットハウンド(犬)の足音まで一つ一つ作ったそうだが、間違いなく世界最高レベルだと思う。そして前評判通り、マニアック過ぎる SF 的要素、意味深で哲学的かつな衒学的なセリフの数々、さらに大仰な CG と随所に配置された効果的な音楽と、まさに「押井節」全開といった案配。
ストーリーは基本的に前作からの続編という形だが、主題としては「人間が人形を作りたがり、そのくせ不気味に感じるのはなぜか?」という、SF の世界では割とメジャーなテーマが基本となっている。その流れでは抜け殻のバトー、機械の人形、生身のトグサそして犬と、各々の定義としてのコントラストが活きていたと思う。そして副題は「孤独」か。脳の一部以外すべて機械であるバトーが最愛の相棒を失い、「自分以外の何か」、つまり新しい相棒である「犬」(トグサの立場がないわけだが)にアクセスし、自己を確認したくなる気持ちはなんとなく理解できる。
そしてもちろん物語の根底に流れるのは、バトーと素子の切ない関係だ。終盤、バトーが人形に洋服をかけるシーンでは思わずぐっときてしまった。情熱的な描写ではないが、深く静かに相手を思う男の淡い感情が見事に表現された良いシーンだったと思う。一方の素子のほうも「ネットに繋ぐとき、私はいつも貴方のそばにいる」と言っていた。やはり素子もバトーへの「愛」を持っていたのだろうか。
それにしてもこの映画、見事なまでに色気もなにも全くなしである。なにせ登場人物が揃いも揃って終ぞニコリともしないムサ苦しいおっさん達と、愛玩道具の割に全くエロティックでない無機質な人形、そして犬。以上。まあ元々そういう手合いのアニメではないのだけど、しかしこれだけでも観る人間を選ぶような気がする。
ちなみに現在「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」が日本テレビ系列で放映されている。もしまだこのシリーズを未見であれば、まずはこちらから見てみるのも手っ取り早いかも。
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