ウニバーサル・スタジオ (ハヤカワ文庫 JA キ 6-8) 北野 勇作 早川書房 2007-08 売り上げランキング : 247198 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
舞台は近未来の大阪。ここにウニバーサルスタジオという、アミューズメントパークがある。もちろんこれは実際に大阪にある某施設のもじりというかダジャレである。このそもそもの設定に始まり、現実の大阪の街並みや文化、大阪に生きる人たちの特徴を適度にフィードバックしつつ、ダジャレやパロディ、シチュエーションコメディを交え、正に大阪的コテコテさで表現したのが本作である。
本作には明確な主人公がいない。ウニの形をかたどったウニバーサルスタジオというアミューズメントパークを舞台に、内部の観光案内やスタッフの談話が入る一方で、ケンタッキーフライドチキンでおなじみのカーネル・サンダースがテロリストとして活躍していたり、大阪の中心部の梅田では泥沼の中でカエル型テロリスト(カエルを擬態しているからケロリストという)とヒトとの戦いが描かれていたり、まるでエヴァンゲリオンのような巨大生物兵器として道頓堀のグリコの巨大ランナーが動いたりと、施設の中と外での出来事をただひたすら説明していくだけである。
そして終盤に提示される問いかけ。結局のところ、誰と誰が何のために戦っているのか。そもそウニバーサル・スタジオとはなんなのか。それに何より、この世界は本当に存在しているのか。ダジャレやパロディ満載で一見陽気にみえつつも、正に地に足が着いていないようなそこはかとない不気味さが本書のミソか。
著者の過去の作品にもあった、断片的な物語を徐々に紡いでいくことで全体として成り立たせていく重層構造的な手法と、関西独特の感覚を読み取って理解できないと、なかなかこの作品は楽しめないのではないかと思われる。前者とはともかく、私はベタベタなダジャレや大阪的な濃い文化も嫌いじゃないのでなんとかついていけたが、やはり万人向きとはとても言えない気がする。それと両生類全般が生理的にダメ、という人も読むのはきついかもしれない。
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