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「チーム・バチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」、「ジェネラルルージュの凱旋」に続く、「東城大学医学部付属病院」を舞台にした作品の最新刊。舞台はおなじみの病院なれど、時代は遙かにさかのぼって約二十年前の 1988 年。三作品の主人公である田口医師がまだ医学生で、病院長の高階医師がアメリカ帰りのビッグマウス講師という頃の話。
相変わらず漫画のキャラクタのような誇張気味に性格設定された医師達が活躍する様子は、まるでどこかのライトノベルのような雰囲気ではある。しかしそこは著者が現役の医師だけあって、手術現場の克明な描写や医師同士の確執、医者や病院と製薬メーカとの癒着など、第一線のプロが描き出す迫力とリアリティは、凡百のライト小説とは一線を画す。
物語はアメリカ帰りで新進気鋭の高階医師と、食道癌の権威で「ゴッドハンド」の誉れ高い佐伯医学部長の確執から始まる。そこに佐伯と過去の因縁を匂わせる、神業的な手技を持つ渡海講師、一癖も二癖もありそうな黒崎助教授、高階医師を当時から「権ちゃん」呼ばわりしていた藤原看護婦長、すでにこの頃から寝てばかりいた猫田看護主任などが絡む。さらに渡海の過去にまつわる一人の患者が登場する。検査の結果、その患者の体内にはペアンが残されていた。オペを執刀したのは佐伯。はたしてこれは医療ミスか、そしてブラックペアンの正体は。と、怒濤の医療ミステリが展開される後半はグイグイと引き込まれていく。
ちなみにタイトルにある「ペアン」とは表紙にも書かれている医療器具で、組織をつまんだり血管の断端をつまんで止血したりするのに用いる。普通は金属製だが、ブラックなのは素材がカーボンだからであり、もちろん特注品という設定になっている。カーボンで出来ているので、したがってレントゲンに映らず、また患者が死亡した後、火葬してしまえば綺麗さっぱり燃えて無くなり証拠が残ることもない。こんなの、ほんとにあるんでしょうか。
ところで作者のデビュー作である「チームバチスタの栄光」だが、なんとこの度映画化が決まったそうだ。オフィシャルサイトはこちら。
で配役。田口医師の性別が変わって女性になる(竹内結子)のはともかくとして、いやそれもどうかと思うのだが、物語の核である厚生労働省の役人、白鳥が阿部寛ですか。まあ原作通りの脂ぎったデブキャラだと、絵的かつ興行的にまずいのかもしれないけれど、それにしたってこれはいかがなものか。力うどんをジュルジュル喰ったりしてくれるんですかね。
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