首相退陣の第一報を私が知ったのは、朝から日本商会関連のカンファレンスに出席していた上司からの電話であった。カンファレンスの途中、突然大使館関係の人が会場に飛び込んできて「首相が辞任を発表した」と告げたという。その報を聞き大使館や日本商会の人たちは取るものもとりあえず、大慌てで走り去ってしまった。当然会議は打ち切り。後には呆然と立ちつくした企業関係の出席者だけが残されたという。なかなかそんな機会もないので私も会議に行けば良かったと暢気に後悔したが、しかしいきなりこう来たか、と私も驚いた。
タイミングとしては決してよくはないけれど、しかし総理が自ら辞めるというのだからどうにもしようがない。健康問題や脱税疑惑など囁かれているが、やはりテロ特措法は総理の首を賭けなければならない重要案件だったということか。しかしこの話って、結局は湾岸戦争の時の尻拭いを未だに続けていることの証でもあるわけだが、今の日本や国際情勢に照らし合わせてみれば、(現状の日本では)生命線ともいえる原油獲得と、それに伴う中東‐インド洋‐マラッカ海峡‐台湾海峡の海洋航路確保のため、さらには核保有国でありイスラム国家でもあるパキスタンを「あちら側(原理主義側)」へ傾かせないための楔である。今ここでポシャるようなことになった日には、エネルギー危機と国家的信用の大失墜で、それこそシャレではなく「日本オワタ \(^^)/」になると思うのだがどうか。
それにしても政権発足が去年の 9 月だからまだ 1 年。自民党を「ぶっ壊した」小泉元首相がお膳立てしたからこそ誕生した若い宰相で、家柄はともかくとして政治的力量は未知数ではあった。しかしかつての宇野さんや海部さんなど、はなからただの「首のすげ替え」であることを誰もがわかっていた人たちに比べれば、小泉元首相に対する圧倒的な支持率を継承して長期政権になる可能性も十分あった。それがたった 1 年ポッキリで、しかもこんなにもボロボロになって退陣する羽目になるなど、全く予想していなかった。
ボロボロになってしまったけれど、その要因というのも自ら何か致命的な失策をしたわけではないというのが、なんともお気の毒ではある。毎度毎度の不祥事に人の尻拭いばかりさせられて、「坊主憎くけりゃ袈裟まで憎い」的な集団ヒステリックとも思える批判が集中したのだから、嫌になる気持ちもわからないでもない。しかしそれを上手に捌いてこそ頂点に立つ人間の器であり、そういう意味では本人の力量も確かに足りなかったのかもしれない。仲良しや借りのある人間ばかりが周りに集まっては来ても、忠実に仕える家臣や有能なブレインがいなかったのも問題だったか。
しかし防衛庁から防衛省への昇格、教育基本法の改正、社会保険庁の解体、サラ金やパチンコ業界に巣くう在日朝鮮系の利権へのメス入れなど、たった一年で結構な成果、それも今まで誰もが及び腰で触れることさえ出来なかった戦後の膿を次々と絞り出していった(あるいは絞り出す先鞭をつけた)ことは評価できると思うんだが。特に日米豪印の四カ国同盟(韓国は除外というのがミソだ)と、それに伴うオーストラリアとの安全保障条約締結は歴史的な快挙だと言っていい。なのにマスコミの皆様はそれらをことごとく無視するのはどうしてなんですかねー(棒読み)。
ちなみに中国でも安倍首相退陣のニュースはトップ扱い。ただざっとながめたところでは、靖国神社参拝問題などで反日感情が爆発した小泉元首相の時とはだいぶ異なり、反応はおだやかな感じであった。中国外交部(外務省)が「(安倍首相が)中日関係の改善に積極的な役割を果たした」というコメントがあったぐらいで、あとは事実を淡々と伝えるのみというところ。首相就任の時に、アメリカやその他の国よりも真っ先に中国を訪問したのも記憶に新しいが、そうした「面子を立てた」行動が評価されたのかも。もっとも最近は気味が悪いぐらいに日本におもねる様子を見せている中国様だから、こうした態度になっているだけなのかもしれない。まあしたたかなこの国のこと、次の首相が誰になるか、はたまた政権交代が本当にあるのか、今後の国際状況いかん、などなどによってはコロリと一変する可能性もあるけれど。
しかし日本ってこれからどうなって、どこに行こうとしてるんですかねえ。
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