■ Gronholm announces retirement
フォードのマーカス・グロンホルムが、今シーズン限りでの現役引退を表明。引退の理由として、「今回の決定は信じられないぐらい難しいかった。ラリーはずっと人生そのものだったから。自分としてはまだトップで戦えるスピードを有しているうちに辞めたいと思った。勝てなくなるまで、引退するという結論を持ち越したくなかった」とのこと。
ラリーというモータースポーツは、サーキットレースのようなここ一発の速さよりも、経験に裏打ちされた熟練の技が勝敗を決することが多い競技である。そういう意味では現在 39 才のグロンホルムは、正に脂の乗りきったドライバーであった。今年もこれまでドライバーズ・ポイント、マニファクチャラーズ・ポイントともにトップの位置にあり、まだ五戦残しているものの、十分にチャンピオンの座をつかむチャンスはある。まだまだトップレベルでやれるとは思うのだが、本人のコメントのように「ここが引き際」と感じたのだろうか。
グロンホルムは今でこそ WRC 最高峰のドライバーとして名を馳せているが、その長いキャリアの中で下積み生活が特に長かったことで知られる。WRC にデビューしたのは比較的早かったもののなかなか芽が出ず、シーズンを通してワークスドライバーとして参戦できるようになったのは 31 才の時。その後はプジョー 206 WRC の圧倒的な戦闘力と、グロンホルム自身の実力が見事に噛み合って、一時は「無敵の帝王」と呼ばれる大活躍であった。プジョーからフォードに移籍した後も着実に勝ち星を重ね、これまでに WRC 30 勝をマーク。「苦労人」として多くのファンに愛されるとともに、その戦歴が伝説として長く語り継がれるであろう、偉大なるフィンランド人ドライバーである。
その彼が今季かぎりで引退とは実に寂しいかぎり。トミ・マキネンが引退し、コリン・マクレー、カルロス・サインツも WRC から去っていった。病魔に倒れたリチャード・バーンズ、あまりにも不幸な事故により熱意を無くしてしまったマルコ・マルティン、レギュレーションの改定によりシートを失ったハリ・ロバンペラやジル・パニッツィなど、名物ドライバーが次々と WRC の表舞台から姿を消していく中、ベテランと呼べるのはグロンホルムぐらいしかいなかった。そしてついにグロンホルムも WRC サーカスからリタイヤ。だが、これも本人の決断なら仕方がない。
でも出来ることなら、せめてあと一シーズン、あと一年だけでいいから走ってくれないものか。だってさ、あんたがいなくなったら WRC がまたつまらなくなっちまうよ。
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