またぞろクソ忙しい日々が続いていますが。
中国の南東部、広東省の北江という川で、人体に有害な物質「カドミウム」が大量流入したというニュースが、中国国内では昨年末から話題になっている。報道によると、鉛や亜鉛の精錬を行っている工場で 11 月下旬と 12 月 11 日の設備修理中にカドミウムが漏れ出たものと見られているとのこと。環境保護当局によれば、11 月の事故については、漏れ出した経過や量は不明。
だが国家環境保護総局は「汚染の発見が早く、対応のスピードも迅速なので、パニックは起こっていない」とし、さらに汚染現場を視察した広東省の省長は「対応が適切なので、飲んだ人はいない」との報告を聞いて、満足げに笑顔を浮かべたという。カドミウムが漏れ出たのは一時期だけで、その後の処置により大事には至っていない、というのがこれまでの経過である。
カドミウム汚染と聞いて我々日本人が即座に思い浮かぶのは、富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病だ。工場から河川に垂れ流されたカドミウム。長年に渡って川を汚染した重金属は、そこに住む魚の体内に蓄積し、また食物連鎖によって濃度はどんどん上昇する。その汚れた川で獲れた魚を食べた人間の体でさらにカドミウム濃度が上がり、最終的には骨がボロボロになってわずかに体を動かしただけでも骨折する(だから「イタイイタイ」病という)、あの恐るべき公害病である。
確かに今回の流出事故ではそれなりの対処が行われたのだろう。実際、カドミウムの濃度が安全基準を下回り、飲用に適したレベルに戻ったとして安全宣言を行われている。しかしそもそもカドミウム流出は今回だけだったのか。工場の周りは草木も生えない状態で、しかも同工場傘下の精錬工場では長期間に渡ってカドミウムを排出していたという報道もあり、正直言ってかなり不安である。
と思ったら、今度は中国湖南省を流れる湘江が有害物質カドミウムに汚染されたというニュースも流れた。こちらは広東省の事例よりさらに事態は深刻で、すでにイタイイタイ病と酷似した症状の死者が流域住民から出ていることが明らかになったそうだ。中国ではこの手の汚染事故は以前と比べると逐一伝えられるようになったが、汚染による健康被害まで踏み込んだ報道は異例。つまりはそこまでせっぱつまっているということなのかもしれない。
昨今話題の鳥インフルエンザは、鳥に近づかないか、鶏肉を喰うにしても十分加熱すればまず問題ない(人から人への感染が発生したら別だが)。しかしカドミウムは話が別だ。たとえ焼こうが煮ようが、その濃度が減ることはない。しかも食べれば食べるだけ、濃度はどんどん上がっていく。したがって唯一の自衛策は、汚染された魚や生物を食べないこと。なんだか魚を食べる意欲が急激に萎えてきた私である。
しかし野菜の残留農薬問題に、鳥インフルエンザ、そしてまたカドミウム汚染。はたして中国で何を喰えばいいのか。いっそのこと覚悟を決めて開き直るしかないのかもしれないけれど。
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