年末から正月休みにかけては比較的暖かかった北京。しかしここに来て、最低気温 -10℃ 以下、昼間の気温も連日氷点下と、また厳しい寒さがぶり返してきた。こういう寒いときは体の中から暖めるのが一番である。というわけで、本日は家の近所にある鍋屋に羊のしゃぶしゃぶを喰いに行ってきた。
羊肉のしゃぶしゃぶは中国東北地方の代表的な料理の一つだが、また北京を代表する料理でもある。北京に住む人はみな羊肉のしゃぶしゃぶが大好きで、冬はもちろん体が暖まるし、暑い夏でもスタミナがつくので人気があるとのこと。ちなみに羊肉のしゃぶしゃぶのことを「シュワンヤンロウ」といい、「シュワン」は漢字で「サンズイに刷」である。焼肉の場合は「カオヤンロウ」。「カオ」はそのまま「焼」を当てる(簡体字なので字体は異なる)。
羊肉は超薄切りにされた肉片が丸められて大量にお皿に盛られてやって来る。羊肉というと独特の臭みが苦手な人がいるようだが、北京のものは全く癖がなくてあっさりしているので、いくらでも食べられる気がする。実際、北京では一人で平気で 1kg ぐらい食べる人がいるそうだ。しかし日本人の平均的な大きさの胃袋を持つ我々は、とりあえず 200g にトライ。
鍋の種類はいろいろ選べるが、今回は「白湯」と「辣湯」のミックスにしてみた。白湯は鶏ガラベースのあっさりした味ながら非常にコクがあって、しゃぶしゃぶの湯としてでなくこのままスープとして飲んでも大変美味しい。一方の辣湯は、この店では辣湯の辛さを「小辣(ちょっと辛い)」、「中辣(普通に辛い)」、「真辣(激辛)」の三段階から選べるとのこと。どうせ喰うならと調子に乗って「真辣」を選ぶ。すると出てきたものは、唐辛子がボコボコとたゆたい、怪しげな湯気がもうもうと立つ真っ赤なスープであった。地獄の釜もかくやという案配である。試しに飲んでみると、これがまた正に激辛。一口すすっただけで、食道から胃にかけてまるで火炎が走ったような熱さを感じ、全身から滝のように汗が噴き出す。しかしこれが羊肉をしゃぶしゃぶしてみると、ただ辛いだけでなく様々な香辛料がたっぷり入っているからか、実に奥深い味となるから不思議なのだった。
羊肉以外にも青野菜やらキノコやら魚のすり身の団子やらを鍋に放りこんで食すわけだが、中でも美味いのが蝦である。まだ生きたままの蝦を鍋に投入し、待つことしばし。生前は灰色の縞々模様だった蝦ご一行様が見事な桜色に茹で上がったら、あとはひたすら喰うのみ。今回は白湯で茹でてみたが、元々の鶏ガラの出汁に加えてそれまで煮込んだ羊肉や野菜から出た出汁が渾然一体となって蝦に染みこみ、複雑かつ濃厚な味わいの茹で蝦となるのである。美味い蝦を肴にして、ここは北京らしくアルコール度 50% の白酒でも決めたいところ。だが軟弱な我々はビールで十分。いやビール上等。ビール最高。
たらふく喰って表に出ると、いきなり強烈な冷気が襲ってくる。吐く息は真っ白で、道路に流れた水もガチガチに凍っている。今日も軽く氷点下 10 度以下だろうか。しかし鍋のおかげで体は中からポカポカ暖かい。また寒さに耐えきれなくなったら喰いに来ようっと。
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