北京に赴任することが決まって、やることは山ほどあるわけだが、今日はそのなかの一つ、予防接種を打ちに行ってきた。
清潔な日本で暮らしていると感染症の恐怖を実感することはほとんどないが、海外、さらにアジア圏である中国では何が起こるかわからない。ネットなどでいろいろ調べてみると中国ではまだいくつかの感染症が存在していて、特に長期赴任する場合には、「破傷風」「ジフテリア」「日本脳炎」「A 型肝炎」そして「狂犬病」の五つの予防接種を受けた方が良いとのこと。さらに日常生活で感染することはまれではあるものの「B 型肝炎」も受けておいた方が良いらしい。こんなにたくさんワクチンを打たなければならないのかと思うと愕然とするが、ともあれ備えあれば憂いなしということか。個人でできることは全てやっておきたいものだしなあ。
受診機関もいろいろ検討した結果、お台場の東京検疫所へ行くことにした。ここでは残念ながら「B 型肝炎」の予防接種は扱っていないので、それ以外の五種類の予防接種を受ける。
検疫所に着いて受け付けに行くと、まずは問診票を手渡された。住所や氏名に続いて、体調や渡航に関する質問が並ぶシートを順に記入していくと、「渡航目的」欄に目がとまる。
「あなたが渡航する目的を次の中から選んで下さい」
ほうほう。
「仕事」「観光」
まあ俺の場合はもちろんしご
「冒険」
ぼうけん?
これはやはりコンゴの奥地にムケーレ・ムベンベを探しに行ったり、エチオピア奥地にある幻の白ナイル源流に古代裸族の血塗られた儀式を見に行ったり、ミャンマーの赤い密林を縦走して伝説の野人ナトゥーを生け捕りに行ったり(でも実は熊)する時にチェックするのだろうか。漢なら一生に一度はこの欄のチェックボックスにレ点を付けてみたいものである。
問診表の記入が終わって、医師による簡単な説明の後はいよいよ注射だ。シャレーに種類ごとに色分けされた五本の注射器が居並ぶ様はなかなか壮観である。ちなみにこれらは全て筋肉注射。今回は本数が多いので右の肩口に二本、左に三本注射するわけだが、点滴や献血などの静脈注射と違って筋肉層に届くまで奥深く針が差し込まれるので、これがまた、かなり痛い。医師によると痛い順番に打っているとのことだが、違いなぞ俺には分からない。痛い。全部痛い。極めて事務的に五本全ての注射が終了した時にはぐったりと疲れてしまった。
ちなみにこれらの予防接種は全部で三回受ける必要がある。次回は一ヶ月後、その次は一年後だ。ということは、あと二回もこの責め苦を受けなきゃならんのか。海外へ赴任することの大変さを、身をもって実感している私である。
今後誰かの役に立つかもしれないので、一応資料的なこととして今回の予防接種の代金を以下に。
・ジフテリア 3,200円
・日本脳炎 4,300円
・狂犬病 6,400円
・破傷風 3,500円
・A 型肝炎 8,000円
これにそれぞれの接種証明書が一通 830 円。よって一人分の合計で 29,550 円、二人分の総計 59,100 円也。さらに今回は受けなかったが B 型肝炎の予防接種も一回当たり数千円かかるので、一回の予防接種二人分合計で約 70,000 円ほどかかることになる。これを三回受けると 210,000 円。もちろん保険が効かないので全額負担だからこれだけの金額になるわけだが、なんとも結構かかるものだ。まあ全額会社持ちだから個人的には痛くもなんともないのだけど。