「極楽タイ暮らし」 高野秀行:ワニ文庫
アフリカ・コンゴのテレ湖にいるとされる幻の恐竜ムベンベを追い求めた名著「幻獣ムベンベを追え!」を読んで以来、私の中ではこの著者がちょっとしたマイ・ブームになっているのだが、今度は恐竜ではなくタイである。なんとか大学を卒業後、タイのチェンマイ大学で日本語教師を務め、その後、数年間タイ北部にて暮らした著者のタイ人、タイ文化のお話の本だ。
この本を読んで思い出したのが、学生時代に研究室にいたタイからの留学生のことである。その女性は日本人とタイ人のハーフで(たしか母親が日本人だった)日本語がペラペラだったのだが、とにかく人のことをやたらと「臭い臭い」と言うのだ。欧米人とくらべて一般的に日本人は比較的体臭が薄く、多少汗をかいたからといってすぐ臭う人はそういない。もちろん中にはきつい人もままいるが、それでも面と向かって「臭い」というのは、人としてちょっとどうか。
ところがそのタイ人留学生女史は、真顔で「あなた、臭う」と言うのである。特に、たとえば実験が長引いて徹夜した翌日などに遭遇しようものなら「臭い臭い」を連発する。一日ぐらい徹夜したからといってそんなに臭うものでもないと思うのだが、風呂にも入らず着替えもせず一晩過ごしたと知るや、まるで汚物でも見るような目つきである。何度か「タイではどうだか知らないが、日本では他人のことを臭いと言うのはよくないことだ」と忠告してみたものの、結局全く改まらなかった。
当時、あれは個人的な性格の問題だと思っていたけれど、本書を読んで、実はそもそも基本的なタイ人気質だったのか。と、膝を打つ思いである。まあ本当に私が臭っていた可能性もないではないわけだが。
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